5月7日 三沢から帰宅後、かすかに腹動を感じる。
5月20日
去年の運動靴が小さくなって、ようよう(何とか)足を入れるので、ゴム短靴の六半を買ってやると、店先から履いて大喜び。とんとん、とんとん先へ飛んで歩く。お父ちゃんが帰って来たら、真っ先に見せる。
頭から被るジャケットは、頭を通したり腕を入れたりする時は、「保美トンネル、ピーポッポ」 と 云ふと 喜んで着る。
悩みの種は遊び相手のお連れの事。ままやく(どもる)ので真似をする。食べ物を持って来い と教えて、持ち出させる。嘘を 言はせる。実に困ることだ。
6月1日
小平産婆さんに診てもらふ。お顔がえらいのでびっくりして、じっと見ていて後で、仁に 「赤チン たんと(沢山) 付けてるね」 と 言った由。
6月6日
コンクリートの玄関で、三輪車でグルグル上手く舵を取って廻る。自由自在に進んだり バックしたり、とても上手い。皆で見てやると、得意らしく嬉しそうに、グルグル 美佐子の周りを 廻って見せる。 もう此の頃は美佐子が、自転車で(横乗りをでは無く)高乗り出来るので、平気で保美を乗せて走る。 保美は完全に何の言葉でも皆んな話せる。左隣に三軒目、米の配給所へは一人でパンを買いに行く。
6月8日
母ちゃん茶の湯の会に行った後、皆で下諏訪へ入浴に行った由。なかなか喚いて体を洗はせなかった由。
6月9日 田植え休みだったが、みな学校へ。後、寂しそうだ。
6月13日
パンツを一人で脱いで畑へ飛んで行って、うんちを びりびりと まる。
6月14日
一人でホックを、一生懸命で留め様と、服の前を合せる。パンツとズボンを、一人で足を入れて履く と云ふ。手伝ってやると嫌がるので、転ばぬ様に支えてやると、得々と 履く。もっこに乗せて(おだて上げて)「昨日は一人で うんち やったよ」 と云ふと、又 飛んで行って 一人で やる。
今日は美佐子ちゃん、お父ちゃんと学級PTAの遠足で上諏訪へ喜んで行った。昼過ぎ仁ちゃん帰り、保美の眠いのをいぢ焼かせる(からかう)ので、夕刻まで「ギャアギャア ギャアギャア」、「めろめろ めろめろ」 泣き通す。夕刻、堀さん来たら石を投げつける。バットで叩く。追い廻す。もう帰ってしまふ。お花に玲子先生が来たら、何か気に入らぬ事を言ったら箒を持って行って叩き付ける。ほんとうに困った子だ。昼ま 荒びて遊ぶので、夜は ぐっすり眠る。
6月22日
昼頃、兄と姉とに両手を引かれて、喜んで「行って来るでねッ」と三沢へ遊びに行く。兄ちゃんの三分の一も無い身の丈。でも何時の日か、同じ様に大きく成る時が有るのだ。夕刻七時頃、元気で帰って来た。一人で昼寝も、よい子でコロリと起きて、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんに褒められた由。
6月30日 鼻水やハクションで困り、病院より薬をもらふ。
7月1日
昼間、生花の会に久保川先生の奥さん、赤ちゃん連れて来たら、知らぬ間に柄杓に水を汲んで来て、赤ん坊の顔へぶち空けて驚き、頭を殴り付けてしまふ。花の間を、とんとん、とんとん飛び歩き、実に困ってしまふ。花に使ふ水を、どんどん玄関に打ち空けてしまふ。ほとほと困ってしまふ。
7月10日
母の体にうっつかり(背もたれ)ながら、「随分大きい おなか だなあ」 と 云ふのに驚く。
7月12日
三沢へ朝、梅もぎの手伝ひに、兄姉と共に元気で行く。「行って来るね」と喜んで行く。
胎児の位置が変だとの事に、病院で二度も診てもらって直らぬとの事なので、小平さんに診察してもらふ。午後来て診て戴いたら、腹壁が厚く、慣れぬ人には判らぬが、位置は正常で、元気のよい子との事に一安心する。女の子の位置らしいとの事に、美佐子大喜びだ。お花の会あり。疲れてなかなかよく眠れず。今夜は胎児もよく動く。皆よく眠っている。
7月某日
夜、お花の邪魔をさせぬ様、皆で子守に一苦心。字を書く真似をして、
「よく書けたで、校長先生が学校へ来てもいい って言うよ」 と云ふ。
三輪車自由自在に乗りこなせる。ありとあらゆる言葉を話す。 母の乳首を
一寸、母の傍へ来ると直ぐ、懐へ手を入れて掴む。何と騙しても駄目。
7月22日 初めてパンツとズボンを一人で、知らぬ間に穿ける。
朝七度二分。ぐずぐず、めろめろするので病院へ。八度三分あり。扁桃腺の熱とのこと。青い顔をしながら注射の疲れも分からずテクテク歩くので、扁桃腺の熱は高いし、可哀想だったが、チューインガムをねだって、持ったまま歩くので、市役所迄おんぶしてやりバスに乗る。
四時までぐづぐづ母の胸に取っ付いている。夕刻になって動き出し、元気になる。母 WCへ入っていると、外でしゃあしゃあ音がするので見ると、自分でパンツとズボンを脱いで、おしっこしている。
そのうち、「一人で穿けたよ」 と見せに来るので 驚く。
7月30日
九時、家へ集まって戴いて下諏訪の生花の奉納会へ母出発。保美ちゃんはお父ちゃんにお子守して戴いて、もう家に居無い。安心して母出掛けるが、お腹が大きいので一苦労。皆に荷物を持って戴いて行く。
涼しい日だったが、ごたごたするので汗がじくじく。服(和服ではなく洋服)を着て行ったが暑い位。なるべく動かずに座って世話焼きだけで済ますが、最後は見なければいけないので、つい八時迄。
保美が待ちかねている。バスを降りたら、美佐子ちゃんにおんぶして居て、「母ちゃん、母ちゃん」と大喜びだった。一日中お父ちゃんに甘へてのお子守に、お父ちゃんヘトヘト。そこへ母、腹が痛くて疲れ切って帰り、体中もんだり摩ったりして戴く。
夜、仁、美佐子ちゃん、小平産婆さんに呼びに行ってもらひ、明日来てもらふよう頼んで来る。
7月31日 雨
(母と保美)二人で最後まで寝て居る。疲れて、動くと胸がつかへて、息が出来ない様な気がする。十時頃、小平さん来て下さる。(胎児が)ゴトンと向きを変へたが、大丈夫らしいので一安心。布団の中で保美と眠るが、とろとろしたのみ。苦しくて安眠出来ず。
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