9月3日
運動会近づき、長い髪のままなので理髪に連れて行き、刈り上げにしてもらふ。やらぬ前から泣いて泣いて、なかなか泣き止まず、やっと騙してもらふ。帰りは 「さよなら」 と、カリントもらって食べて、元気で来る。とても 可愛らしい都会の子の様になる。後ろ付き、父にそっくり。
9月4日 三沢へ。とことこ畑の祖父の許へ行く。
9月6日 田中さん方へ行き、「アメある?」と言ってねだる。
9月7日
ジャムのパンの、ジャムの所だけ食べる。顔中ジャムだらけ。父の持っているパンと、「こうかんするか」 と、交換の文句を、ちゃんと使ふ。
「とうさんぼするか」で通せんボを盛んにする。配給所へ行き、秤に乗りたがる。上目まで三メ五百匁(13、1kg)。
9月12日
お父ちゃんも病気で岡谷病院行きを一緒に。昨夜ひっつる様な咳が出るので診察して戴くと、三十八度五分の熱に驚く。注射して戴く。熱があるのに、じっとして居ず飛び歩く。
9月13日
「これ、まるぼうの玉子だぞ」。絵を見て、「丸房のおぢちゃんだ」 と云ふ。
ハクションをし、鼻水を 出し通し。薬を、粉の分は、何としても 飲まぬ。歯を喰いしばって飲まぬ。
9月14日
朝、「母ちゃん」とよい子で起きて来て、一人でおしっこするとて、上手に着物まくり、する。もう時々一人でやる様になった。
話も全部の事柄が解る様になった。リンゴを秤に掛け、安いリンゴの安いを、「ナスイりんご」 と 大声を 張り上げる。
9月30日
とことこ 外から帰って来て、お客様が一人で 座敷に居たら、一人で行って、
「今日は」 と あいさつするのに、びっくり。誰も世話を焼かぬのに驚き、陰で聞いて父と美佐子、顔を見合わせ、母驚く。入浴洗髪きもちよさそう。
10月1日
校長先生の奥様、お花の稽古に いらっしゃって 一人で座って居る時、又
「こんにちは」 と 云って 褒められる。
大きい机を引っ張って中床へ上る事を覚へたり、何でも取ってしまふ。背丈も高く、十二の引出しの上の物を、立って降ろしてしまふ。
夜中、三十九度五分の高熱。
10月5日 北部中学校運動会
早朝、仁の飛ぶ(走る)所を見んものと出かける。うすら寒く、沢山着ても寒い。見物して居るのに、兄ちゃんも なかなか見つからず、母に しがみ付き、「お家へ帰る、お家へ帰る」 と 言って機嫌が悪く、なかなか よい顔をせず。陽が差す時は、こうもりで隠して 陽をよけては居たが、気分が変なのか心配となるが、終りまで見て来る。夜 皆で入浴に 高林さん方へ借りて行く。
10月6日 小井川小学校運動会
又今日も早くから運動会に行く。もうゴザも一ぱい敷き詰めてあって八幡さんの分へ座らせてもらふので、よく見える。今日の方がよい子で見て居たが、えらい(随分)はしゃがぬ。隣りの子供が食べれば、食べる物をみんな何でも欲しがり、むしゃむしゃ食べ通す。仁兄ちゃん昼ころ学校より帰り見物に来る。大きい帽子をかむり日除けをして見るが相当暑い。終り迄よく見てよい一日でよかった。
10月8日
七日より 稲刈り休みなので、お父ちゃんは朝、佐渡へ 職員旅行に御出発。
もう 岡谷祭りが 近づくので、お客呼び を するのにはと、障子張りするので、仁・美佐子に、だんだん張り替えさせるので、手伝ひ。
10月9日
晩頃から熱っぽく、お腹がピイピイとても下るので食べ過ぎかと考えてみる。
10月10日
朝、熱が九度五分あり驚き救命丸など飲ませる。が、益々ひどい熱。昼に計ると四十度余。その上ピクピクと痙攣おこし、震え上がって飛び起きてしまいそうなので、しっかり押さえ付けている。大至急電話で岡谷病院の事務長さん宅へお願いして、先生に来て戴く様お願いする。一刻千秋の思いで来診を待つこと二十五分で、小沢小児科の先生とびつけて来て下さる。その嬉しさ有難さ。お父ちゃんの留守中、大事になればと胸が痛かったのに、よかったと思ふ。診断の結果は肺炎とのこと。二本のペニシリンの注射を打って下さる。
暫くは未だ熱が高く痙攣が続く。そのうち次第に治まる。よい子で聞き分けて、ちゃんと薬を飲む。何だかやたらにいじらしい。氷を兄ちゃんに直ぐ買って来てもらって頭を冷やす。薬はちゃんと病院から届けて下さる。
障子をみんな剥ぎ掛けて大困り。けれど仁と美佐子と一生懸命やってくれる。夕刻、野口さん寄って下さる。
10月11日
昼過ぎ又、小沢先生来て下さる。朝ずっと熱下がり平熱となる。起きて動き出す。もう薬も、何としても飲もうともしない。現金なものなり。でも一安心、よかったと思ふ。
10月12日
昼間とことこ出歩いて困る。元気になりよかった。夜おんぶして外へ出る。お父ちゃんの御帰りをさんざんお迎へして居て、余り時間が食い違うので家へ帰ったら一足遅く、旅から御無事で御帰り。みんな大喜びだ。殊に保美は元の様に元気でよかった。
10月13日 お祖母ちゃんに来て御馳走作りをしてもらふ。
10月14日
立沢連中を招いたが、来るやら どうかと 思っていると、さゆりサおっ母あと、
岩見おっかあと、カボチャ背負って来た。
【ザ・ははおや・・・の 総目次へ 戻る ↑】