7月1日
夜、姉のバレーの 真似をして、赤いスカートを 裸の上に着て、足を上げたり下げたり跳び上がったり、その可笑しさ。家中腹を抱えて笑い転げる。
仰向いて 体を後へ やるやら、足を投げ出して 手で擦って 「一、二、三」 と 掛け声かけて盛んにやり、皆を並ばせて やらせる。何時の間にか バレーを見て覚へているのに驚く。何時までも、ぎゃあぎゃあ、笑い転げる家中。
7月3日
丸房のおぢちゃん 来て下さる。保美ふざけて 水を 撒き散らかし、唾を吐き、顔を 擦りつけるやら 大騒ぎ。そこら中 水だらけ。
顔へボツボツが出来、いつの間にか膿を持って来たので、たんがの湯へ入浴に行く。バス通らず、長地まで徒歩。 帰り、今井 廻り。本通りで、重い保美を まあこして 転んで 足痛い。
7月7日
新しく綿づくりするべく、布団屋さんを頼む。丸房のおばちゃん、綿づくりの見学に来る。お祖母ちゃん三沢から来てもらって、綿づくりを見る。足助さんを頼む。九時頃より夕刻まで、裏表全部新しいのを、十一枚つくってもらふ。大財産なり。夕刻皆で夕食の折、保美、高い布団の上から滑って、コンクリートの上にペシャンコに落ちて頭へ怪我をする。父あわてて・・(以降、未記述)
7月11日 夜 発熱 三十九度四分
7月12日
朝びっくりして久保田さんへ診察に来て戴くよう電話を掛けたが、十時頃もう靴を履いて庭へ出たり、「パン買いに行く」などと飛んで行くので、久保田医院へお断りの電話かける。 夜、また熱出る。どうも、はしか らしい。近所中やって、いよいよ保美一人残ったらしい。
7月13日
久し振りの陽の目を見る。朝、清潔(衛生検査)の見廻りに来るとの事なれど、保美ぐずってやれず。「母ちゃん、母ちゃん」とぐざる。顔へボツボツ赤くなって出る。お腹が血っちて硬いのがちょびちょび出たが、今朝はぴいぴい下る。ぐざってみたり、又元気でころころ遊んでみたり。綿入れを沢山着せておく。
午後三時過ぎ、久保田さん往診して下さる。はしかは確実なれど、肺炎っぽいとの心配でペニシリン一本注射して下さる。熱は昼、三十八度四分。次三時、八度。 お父ちゃん早目に帰って来て下さる。なかなか床の中に居ず、水をいじって遊んだり、蓄音機かけたり、又いじれたり。
7月14日
朝、久保田さん方へ行こうと考えていると、小口先生の奥様来て下さったのでやめる。まだ元気よく、おはぎなど食べる。 夕方、雨の中を伊藤先生方へ御見舞にお伺いして、ゆっくりお茶頂戴して土砂降りに帰る。
美佐子、「早く寝る、寝る」 とて、布団を敷いて 一人先に眠り、みると火の熱、三十九度四分、驚く。仁、三沢。父、学校で、三人きりの寂しさ。
7月15日
雨が土砂降りの小止みも無し。保美元気故、医者も招かず。顔の辺りが何だか変わってて咳でる。鼻水が出る。夜、三十八度四分。
7月17日
いよいよ、はしかで 顔へ出る出る。今日は床の中で高熱でぐづぐづ暑いので苦しいらしい。可哀想なり。ごほんごほん咳でる。夜も苦しんでよく眠らず。
7月18日
先生来て下さる。体いっぱいだんだん出て来る。床の中なれど熱いし、沢山着せるので苦しい。夜は、「かいい(痒い)、かいい。其処じゃねえ、其処じゃねえ」 と、一晩中ごろんごろん苦しみ眠られず。
薬もよい子で、高価な薬を四時間おきに、よく飲む。顔も赤く、体もどす黒いボツボツ。「かいよ(痒いよ)、かいよ」多く、驚くほど出る。重いはしかだ。
※ 是より5頁の空白(8月分は皆無)。以後は 五月雨式の記述 と なりゆく。
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