11月3日    小井川小学校 七十七周年 記念祭典
早朝より皆おおぜい集まる。賑やかなバザー。学校でも賑やかい色々の催物があり、大体みてまわり、お父ちゃんも共に家中で御汁粉のむ所へ行って、小っちゃい御汁粉のむ。
午後一時頃、仁、保美と上諏訪の小菅方へ招かれて、八重子さんの結婚の披露式に招かれて行く。よい子で夜帰ると、式典があったので一人で留守番の美佐子。ちゃんと、おじや(お粥:雑炊)を こしらえて待って居てくれる。

11月4日
小井川校体操場にバレーなど催物あり。真ん中へ入るとギッシリ 立錐の余地無しで、しんと(静まり返る中)『天然の美』を歌う時、(保美)大声で喚き出し、母こんな切ない事いま迄に無し。恥しき暴りなり。夢中で出て来て、切なくて切なくて裸足のまま家へ帰る。 保美のお尻を、嫌と云ふ程、つねり上げて しまふ。

11月14日
頼んだめんよう(羊)の毛糸が出来て来ないので、服も買ふ心算も無かったが、お父ちゃんが 「それでもやあ、この子ばかり、あんまりだ」 (それにしてもなあ、周囲に比べたら保美の服装は余りにも酷すぎるんじゃあないのか?)と仰るので、カネジョウ(屋号)へ服を買いに行き、よいと思って買ったら小さくて、又 くみ(交換)に行き、五百円へ 十円掛けるのを 買って来た。


11月15日    (七五三の御宮詣り)
午後一時より、小井川:賀茂神社へ 行く。みな 賑やかに 着飾っている。
保美ちゃんは、みな殆んどが 歩いているのに、「まあこ、まあこ。ごしたくて(疲れて)」 と云って、母の背に毟り付いてしまふ。 山田写真屋さんに一枚記念撮影してもらふ。丸房へ お寄りして お茶を頂戴して 夕方帰る。


11月某日
年上の子から悪い事を覚えて来る。何か持って来い、何か欲しい物をねだらせる。相手の真似をして、とても、ままやく(どもる)様になり、恐ろしさに身震い出そう。しかし子供の遊び相手も欲しいので実に困る。



12月10日
母ちゃんの誕生記念の明日の日を前に祝って、カリント、インゴロモの袋入り五人分、お父ちゃん買って来て戴き、お茶を呑む。
カリント食べたら「耳が痛くて痛くて」と云ふが気にも留めず居たら、夜中一時頃、耳が痛いと泣き出し、とても泣く。いい子、いい子と騙したが随分泣いて、泣き寝入りに眠る。朝方みると、耳だれが出ている。右の方。


12月11日    母の誕生記念日
野口事務長さんのお宅へ電話でお願いして岡谷病院へ行く。小児科で、母も共に診察してもらふ。耳鼻科へも寄る。中耳炎とのこと。ペニシリンを打つ。母も咳なかなか止まらぬ。保美、少し痛いとも ゆわず 遊ぶ。夜、父、富三郎さん所へ呼ばれる。
「やって かなんでも、おかしかないよ」=( 関西弁:やって叶わなくても、おかしい事は無いよ)と、大人の様な事を言ふ。

12月12日
病院帰りに桃太郎さんの絵本一冊買って来る。もう、よく分かっている。
「桃 切る 包丁どこへいった?」、「お山は どこに 在るの?」

12月14日    満二年八ヵ月
もう言葉一通り殆んど完全に覚えたらしい。近所の三歳の子供は未だ、こんなに はっきり 誰も言はない。

12月17日
美佐子ちゃんの行くのを、泣いて止めて、遊べと云ふ。淋しいので 泣く。
雪だるまを こしらえろ と ねだる。下駄を 履きたくて、大きいのから 色々履いて歩いてみる。二、三日前より 草履を 上手く 家の中で履く。








         
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