8月2日   大やへ行く。広い所でどんどん飛び歩き大騒ぎ。

8月4日   乳を吐く。熱出る。

8月5日   しゃあしゃあ下痢。とても、ごしたい(疲れた)顔。

8月6日
夜、障子へ指で穴を空けるので、外側で母が指をしっかりツメくって(つねって)泣く程しっかり抓っても、じっと我慢している。そのうち手が離れたら、慌てて二尺指し(60cm物差)を持って来て、両手で振り上げて、殴り込みの形をして、障子の穴に向かって、よいしょ ! よいしょ ! と 向かって来る。大胆さに舌を巻く。実に度胸のある児よ と驚き、又嬉しく 家中で語り合ふ。
何かしら発音する。一人で食べる物など茶碗を持たせぬと、ぐいっと取って、一人で飲むか 溢す。

8月8日 今迄しゃあしゃあ下っていたのが、はじめて硬い便となり一安心。

8月9日
写真うつす。冷たい様な 日当り水の中で、裸で 水いぢりしている所を 一枚パチリ。立っている所もパチリ。理髪も逃げて、頭をくいくい動かすので痛むので尚いやがる。夜、泉さん家に入浴に呼ばれて行く。

8月10日
家中で上諏訪へ。父、保美おんぶして下さる。車中父の膝で辺りを見廻している。 宮原の達人叔父さん(父の兄)に 上諏訪駅で逢い、保美 初見参。
宮坂堯先生、開業しているので母そこへ診てもらいに行く。途中伊藤公寅様方へ寄り仁、美佐子も父も保美も、帰って来たら、おそうめん御馳走になっていた。買物をしたり、アイスクリーム仁、美佐子、飲んだ事無いとて皆で飲み、保美も ぺちゃぺちゃ美味しそう。お父ちゃんのみ 本郷へ。後、三沢へ行く。

8月11日   三沢に居る。広い家で飛び歩く。

8月12日
上諏訪行き。途中、小口先生宅へ寄る。子守に美佐子に行ってもらふ。一寸伊藤方へ立ち寄り、医者へ。暑い中、弁当つかふ所も無く、氷水屋へ寄る。背中で騒ぐので握り飯をやると、くしゃくしゃに潰しぼろぼろ零し、母の背中中 くしゃ くしゃ にして、むしゃ むしゃ 食べる。


8月13日
兄ちゃん水浴び(直ぐ下の天竜川)で一日中夢中なり。玄関から足を伸ばして土間へ下りる事を覚へる。林檎をみて「インゴインゴ」と発音する。林檎で育って林檎の発音第一発、可笑しいな。 兄ちゃんが保美の遊んでいる時、何か危ないと思って、保美の体を違ふ方へ除たら、とても怒って兄ちゃんの腕に四つん這いになって喰い付いて、涙を出しながら、しっかり喰っ付いて離さない。兄ちゃんも痛がってきゃあきゃあ云ふのに、なかなか離さない強い保美だ。歯の跡が紫色に残り腫れ上がった。どうしたのと保美に云ふと大きい声で偶然、「やっちゃった。」 と 発音して 大笑い。


8月15日   山田へ写真を撮りに家中で
昼食すませ岡谷へ。第一、第二 仲良組の同級会 (十五日会) に招かれて行く。第一は 丸万そば屋。まだ会員集まらず、お父ちゃん早く見えて山浦から方々廻って来ていらっしゃったので、山田写真館へ皆で行き、二色に家中で撮ってもらふ。
何しろ 写真屋さんで、家中で撮るなんて 初めてで、本当に 嬉しかった。
第一で大変御馳走になり、第二へ先に丸五(屋号)二階へ行く。会員寂しく七人しか。父酔って第一の人に送られて来る。気持が悪く吐いてしまふ。
九時半おいとまして、ふらりふらり歩き、岡谷の町を見ながら三沢へ皆んなで行く。久しぶりに父も三沢へ。夜中二時頃まで保美とび歩き眠られず。
太鼓の音が 方々で 聞こえる。踊りも 賑わふだろう。 明朝は 早々 出かけるので、それの用意。


8月16日
支度の出来しだい、お墓詣りに行く。威久ちゃんも嬉しいだろうね。お父ちゃんのお詣りは。 早昼すませ、重い荷物を背負ってもらい駅へ。十二時上りに間に合ふ。車中、父の膝に保美。
富士見に降り、荷物あづけて、富士見の 別荘地の方へ 見物に行く。
坂をだっこして、父ちゃん連れて行って下さる。見晴らしよい所で、大喜びで 弁当つかふ。きゃあ きゃあ 気持ちがよいので 走り廻る。花の好きな子。弁当つかい 又 元気で見て、山を下り、いよいよ立沢へ。
漬物小屋の所で、草の中で 長いこと眠って 気持ち良さそうな保美。
づるづると 牛の歩みの母、保美をおんぶして、のこのこ帰る。夕方迄に、ようよう家に帰った。


8月17日
朝から方々、お祭りの祝のお餅を 沢山戴く。夕方、相撲見に父と母と保美と行く。行き帰り、おんぶやだっこは父。

8月19日
東京よりの敬作様に、美佐子におんぶの保美と、母にだっこの保美と二枚、写真をうつしてもらふ。

8月20日
いよいよ明日より 二学期だ。夜も 早めに休みたいだろう父に、子守をお願いして雨の中を生花会に行って来る。

8月22日
はっくしょいを何度も何度も、鼻汁をごとごと垂らす保美。風邪をひいたらしいと思っていたら、母も夜になり急に熱で一晩中、足も痛く苦しく眠れづ。


8月23日
母熱あり、休みたいと思へど、外に出たい保美は母をひっつり起こし、帽子をかぶり、「えんえん」と外を指差す。
絵本を出して見せたら、いつまでも捲っては「わんわ」「とと」と一生懸命見て母にも見ろと言ふ。何を見ても 「わんわ」、「とと」 と。
盛んに自分のちんちを引っ張り、父を呑み乍ら、手が空いていると直ぐちんちをいぢっていて困る。ズロース(パンツ)の無い時は特に注意せねばと思ふ。
もう此の頃は、外で姉ちゃん達と何をして来るのか、手足に傷が出来ている。


8月24日
今日も母を引っ張り外出をせがむ。蓼野のそばの小川の畔で、げんのしょうこ採りに行くと、一寸の間に小川に平気でさっさと入ってしまった。子守は油断が出来ぬと痛感する。
鼻汁で顔中くちゃくちゃ。二三日ご飯を嫌がって、清々した物を欲しがったが、今日は御飯を食べる。もう、おんぶも重くて大変だ。


8月25日
傍で注意してやってやると小水も大便も殆んど汚さず。夜中も母がづく(やる気)を出せば、小さい ちんちを ふくらませて、外で とんとんとん と 眠りながらやったり、又は 大声で泣いてやる。採った ささげ(ささぎ:サヤえんどう)の鞘を 畑中ばらまく。外に出たくて、母の着物を引っ張って、出る様にする。

♪づくorずく→やる気、性根、弛まぬ努力などの意味で、通常は「ずく無し」と用い、やる気の無さや手抜き、怠け者、怠惰な様子を謂う:「ずくが有る」も♪



8月27日
夜、久しぶりに大やの庭で入浴する。かなりの熱さに父に抱かれながら大息して黙って入る。夜中も遊んだり、大便を知らせて泣いて沢山やったりする。二十六日に上諏訪より動物の美しい絵本を買って来て戴く。二冊だ。
「わんわ」 「うま」 「とと」 と発音する。「あーちゃん、ああちゃん」とぐしゃぐしゃ何か言ふ。
野球の名投手ならん、投げ方の上手さに舌を巻く。おしっこは泣いて教へる。箪笥の上の物を 二尺指しで突付いて落とす工夫が出る。二階へのぼって行ってしまふ。未だ降りる事はしない。


8月30日
をね(尾根?)へ遊びに連れて行く。とんとん平気で飛び廻り、あっと思ふうちに一間(1、8m)以上もある土手を、腹這いになり、スルスルと 滑り降りてしまふ。見ていて「危ないっ!」と 母の胸の凍る思いがしたのに ゲラゲラ笑って、又のこのこ這い上がって来る保美。又とんとん跳び、母の顔を見ながら げらげら笑って、スルスルと 腹這いで、草の上を 滑り降りてしまふ。 実に、実に 驚く。 もう何度も、さんざやったらしい。驚く母を尻目に転がる様に滑り降りて平気でげらげら笑ふ。これが1年4ヶ月位の、幼き子の やる事かしらと、今更ながら 発育のよい保美に 嬉しく驚く。
運命鑑定をやれる人が来て仁、保美の運の良さを褒めて行ってくれて気持がいい。 道端で毬を上手に投げる。又後へさがって丁度 受けられる加減に、上手い 投手振りをして 投げる。歯八本、下四本 出そろふ。おしっこは、くすくすと知らせ、昨夜は 朝まで四回も 外で まる。










         
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